今日は、BSA Distinguished Lectureを聞きに行った。King Abdullah University of Science and Technology (KAUST)のDavid Keyesさんの講演(題名はParadigms for a 21st Century University: Building a Research University ‘From the Sand Up)。21世紀にいかに新しい研究型大学を作るか、という内容の講演。KAUSTは2009年にサウジアラビアに設立された新しい大学(設立に関しての2009年のScienceの記事)。
まず、KAUSTの設立は21世紀を舞台にした、Stanford大学設立のようなもの(実験)だと言っていた。同じような”実験”が世界各地で行われている(日本の沖縄のOkinawa Institute of Science and Technology (OIST)もその一つだと言っていたけれど、実情はどうなのだろう)。良い大学を一から作るにはどうすればいいか。19世紀におけるStanford大学の”実験”は上手くいった。しかし、21世紀に同じようにしていいものか、21世紀にあったやり方は何か、ということをKAUSTの現在進行中の”実験”の内容を話していた。
大まかに、今までの大学は理論・実験の二つを軸にした大学。これからの大学は、シミュレーション・データの二つを軸にした大学であるべきである。この二つを基に、現在の情報の増加(ビッグデータ)に対応し、利用する。例を挙げると、実験する前に何が上手くいくかをシミュレートする。または、実験できないようなものを計算して理解する。これらは、分野に寄っては、現在の研究でとられている手法ではあるが、大学全体で取り組むというのは聞いたことがなかった。方向性は非常に面白い。サウジアラビアで行われている”実験”だけあって、地理的・文化的な問題(女性に対する扱い等)もあるけれど、Keyesさんは今のところ、上手くいっていると言っていた。他の様々な問題はこの2012年のScienceの記事に載っている。10-20年後にこの”実験”はどうなっているだろうか。
ちなみに、生命科学では、上の例に挙げた後者のアプローチは少し問題になっている。実験で見えない、Observablesがないのに、計算の結果をさも”事実”であるかのように発表するのはどうなのか。実験とすりあわせるといいのだけど、計算だけをやりっぱなしでドンドンするから、実験屋から見ると、困った状態。