テルライド

先月で少し前だが、学会でコロラドのテルライドに行ってきた。Telluride Science Research Centerというところで行われた学会。主に分子科学分野の学会をサポートしている。ゴードン会議と同じく、一つの分野に焦点を置いた学会なので、非常にためになる学会であった。滅多に学会に行かないボスが面白そうだからと、誘ってくれただけはあった。テルライドはスキーリゾート地でいいところではあるが、物価が高いのと、行くのに少し面倒なのが玉に瑕。

ゴードン会議

今年はRadiation Chemistryのゴードン会議に参加した。ゴードン会議があったのは、ニューハンプシャー州のProctor Academy。まず驚いたのは、AT&Tの電波が飛んでいない。自然が多く悪いところではないが、少し不便。泊まった寮の部屋にはクーラーなし(扇風機のみ)だったので、結構暑かった。2年後も恐らく同じ時期の同じ場所。うーむ。内容は少しテーマが偏っていた感じがしたが、面白いトーク&ポスターもあり、悪くはなく勉強になった。

この会議のポスターを作る時に、研究所のポスタープリントをオンラインで頼む時に題名をつける必要があった。その題名の例が”XX(その人の名前)receives Nobel Prize”となっていた。研究所の遊びゴコロ。

ポスターコンテスト

学部の時の大学から、ポスターコンテストに関しての電話インタビューを2-3週間前にされた。その時のコメントが記事になったようだ。大したことは言っていない。学部の時に小さなプロポーザルを書いて、少額でも研究費をもらうというのはいい経験だった。

フェローシップ

少し前のことだが、働いているブルックヘブン国立研究所からGoldhaber Distinguished Fellowshipsというフェローシップを頂いた。正式名称はGertrude and Maurice Goldhaber Distinguished Fellowshipsという。肩書がGoldhaber Fellowに変わった。3年間の任期があるため、研究に集中できる。非常に有難い。

フェローシップと名が付くものを取るのは学部の時以来。大学院時代はフェローシップには縁がなかった。学部の時はUTSWでSummer Undergraduate Research Fellowというものになった。そういえば、その時はSURFに選ばれた人を略してSURFer(サーファー)なんて呼ぶ人もいた。海のない暑いダラスの地でサーファーなんて似つかわないと思った覚えがある。少しだけ遠い昔のことのように思える。

Scientific Exodus

今週はThanksgivingなので木曜日から4連休。見たかったアメリカにいる2013年のノーベル賞受賞者のスウェーデン大使館でのシンポジウムの動画を観た。サイエンスの記事にもあるように、アメリカはもう経済的(科学への投資)に、若手科学者(特に移民)にとって魅力的な舞台ではないということを言っている。近年のファンディング状況を見ていると、その通りだと思う。お金を持っているラボは確かに持っているが、そういうラボがGood Scienceをしているかというとそうではない。NIHやNSFによるお金の分配方法が現状にあったようにならない限り、この状況は変わらないのかもしれない。NIHのInstituteには小さいグラントを増やすところもあるみたいだから、少しは良くなるかもしれないが、全体的に先行き不透明なことに変わらないと思う。エール大学のRothmanさんに至っては、学生にアメリカに留まるな(!)と言っている。チャンスがあれば、何処にでも行く準備は必要だろう。

 

Industry

アカデミアにおける教員の評価の仕方(特に、テニュアトラック助教の採用)を変えないと、ビッグデータを扱える優秀な人材(特に、ポスドク)がインダストリーに流出するだろう、というサイエンスの記事。記事の元ソースはワシントン大学のポスドクJake Vanderplasさんが書いたエッセイ。サイエンスの記事では、Vanderplasさんが言うような評価方法を今すぐに大学がとることはないだろうが、「変化を取り入れないと、科学研究の進歩は遅くなるだろう」という部分には賛同している模様。

 

健康診断

今日は健康診断とレーザー実験のための目の検査を受けた。健康診断の結果は概ね良好。担当してくれたお医者さん(ラボの産業医)も良い感じの人で、色々アドバイスをしてくれた。Ph.D.をとったと言うと、Dr.と呼ばれるが、まだあまり慣れていない。

ここではレーザー実験をする前に必ず目の検査(実験前のベースラインの測定)を受ける必要がある。ボスに薦めてもらった眼科に行った(帰りの運転は危険なので、ボスに連れて行ってもらった、というのが正しい)が、ラボから頼まれる検査は慣れているらしく、書類を書いたらすぐしてくれた。検査のついでにメガネの処方箋も出してもらったので、これで実験用の度付きメガネを作りに行こう。

Comment on PubMed

PubMedにコメント機能がつくというNatureの記事。今はテスト中なので限られた人しか付けられないが、うまくいくと一般公開になるだろう。個々の雑誌のサイトではなく、第三者機関のPubMedにコメントできるというのはいい。先行サイトとしてPubPeerがあるが、PubPeerをそのまま内包するというわけではなさそう。PubPeerのいくつかのペーパーに関するコメントは、実際に著者がしっかりと返答しているものもあり、有益なPost Publication Platformになっていると思う。

僕を含むPubPeerを見ている多くの人が今一番待ち望んでいるのは、このNautre Nanotechnologyにでた論文(と他の雑誌に乗った関連論文)にへのコメントに対する著者の返信だろう。

Paradigms

今日は、BSA Distinguished Lectureを聞きに行った。King Abdullah University of Science and Technology (KAUST)のDavid Keyesさんの講演(題名はParadigms for a 21st Century University: Building a Research University ‘From the Sand Up)。21世紀にいかに新しい研究型大学を作るか、という内容の講演。KAUSTは2009年にサウジアラビアに設立された新しい大学(設立に関しての2009年のScienceの記事)。

まず、KAUSTの設立は21世紀を舞台にした、Stanford大学設立のようなもの(実験)だと言っていた。同じような”実験”が世界各地で行われている(日本の沖縄のOkinawa Institute of Science and Technology (OIST)もその一つだと言っていたけれど、実情はどうなのだろう)。良い大学を一から作るにはどうすればいいか。19世紀におけるStanford大学の”実験”は上手くいった。しかし、21世紀に同じようにしていいものか、21世紀にあったやり方は何か、ということをKAUSTの現在進行中の”実験”の内容を話していた。

大まかに、今までの大学は理論・実験の二つを軸にした大学。これからの大学は、シミュレーション・データの二つを軸にした大学であるべきである。この二つを基に、現在の情報の増加(ビッグデータ)に対応し、利用する。例を挙げると、実験する前に何が上手くいくかをシミュレートする。または、実験できないようなものを計算して理解する。これらは、分野に寄っては、現在の研究でとられている手法ではあるが、大学全体で取り組むというのは聞いたことがなかった。方向性は非常に面白い。サウジアラビアで行われている”実験”だけあって、地理的・文化的な問題(女性に対する扱い等)もあるけれど、Keyesさんは今のところ、上手くいっていると言っていた。他の様々な問題はこの2012年のScienceの記事に載っている。10-20年後にこの”実験”はどうなっているだろうか。

ちなみに、生命科学では、上の例に挙げた後者のアプローチは少し問題になっている。実験で見えない、Observablesがないのに、計算の結果をさも”事実”であるかのように発表するのはどうなのか。実験とすりあわせるといいのだけど、計算だけをやりっぱなしでドンドンするから、実験屋から見ると、困った状態。